本学の特色
建学の精神と校是
建学の精神
「片手に論語 片手に算盤」について
学園の建学の精神は「片手に論語 片手に算盤」である。創立者佐久間惣治郎(1877~1956)は、1933(昭和8)年、学園の母胎となる千葉女子商業学校の創設にあたって、建学の精神をこの言葉に込めた。
そもそも「片手に論語 片手に算盤」は、日本資本主義の育ての親と言われる渋沢栄一(1840~1931)によって掲げられた。事業活動は道徳に適っていなければいけない。不正な富は許されないという主張である。第一国立銀行をはじめとして、500あまりの近代産業を興した渋沢は、その一方で、600あまりの社会福祉・医療・教育などの事業を創設したり、後援や賛助を行ったりしてきた。その実業家としての生き方は、まさに「片手に論語 片手に算盤」にふさわしいものであった。
佐久間惣治郎は東京物理学校卒業後、旧制中学校の教師となった。惣治郎が各地の学校で目にしたのは、知育に偏重して道徳教育を軽視する明治以来の教育の状況である。徳育の重視を様々な機会に主張する惣治郎であったが、公立校の校長に受けいれられることはなかった。
1931(昭和6)年、高等女学校校長退職を余儀なくさせられた惣治郎は、「理想とする教育を行うには私学を興すしかない」と考えた。そして私財を投げ打って、県下初の女子商業学校の創設に踏み切ったのである。渋沢の掲げた「片手に論語 片手に算盤」は、こうして惣治郎によって教育の世界に受け継がれ、教育の理念として掲げられることになる。
ここで「論語」とは、人として養うべき倫理道徳であり、「算盤」とは、自活するために備えるべき知識・技術である。「論語と算盤」を兼ね備えた人材の育成、つまり「人間性と実学の重視」が、建学の精神とされたのである。
惣治郎は、1948(昭和23)年に執筆された「本校の教育」の中で次のように述べている。
「人間は、論語だけで生きてゆかれないし、又算盤だけでは人間として不完全である。道義と云うものは人間の実生活の中で実現されて行くのである。生活を独立してやって行けないようなことで、幾ら倫理だ道徳だといったところでそれは頭の中だけの観念の遊戯で駄目である。そこで私は、片手に論語、片手に算盤が、教育の理想の一つの形態だと考えるようになった」
学園はその後1968(昭和43)年に短期大学、そして1988(昭和63)年に大学を開設するが、両大学においては、学園の掲げる建学の精神を踏まえて、「良識と創意」が校是とされた。
「良識」とは、社会で広く認められている健全なものの考え方であり、「創意」とは、ものごとを新しい視点から深く考えていく資質である。変化の著しいこの時代、謙虚に学びながら思索を深め、新しい視点からものごとを考えていく人材の育成が校是とされたのである。
校是
本学は、「良識と創意」を校是とします。
民主主義社会は、暴力や流血によらず、理性と討論によって成立するものであります。これを健全かつ円滑に運営してゆくためには、国民は、自分のことだけを考えるのでなく、他人の立場や考え方を理解して行動する良識の持主とならなければなりません。
日本は、明治以来西洋の近代工業国家に追いつくことを目標として、西洋の学問・技術・文化の習得吸収に精力的に努力をしてきましたが、今やその目標を達成して世界の経済大国に成長し、新しい時代を迎えています。これからの世界の変化に対応してゆくためには、教育は、個性と多様性を尊重し、自分で物を考え創意・工夫する能力を培わなければなりません。さらに国際的視野をもち、国際社会の一員としても貢献できる能力を育成しなければなりません。
本学は、「倫理と経済」の建学の精神を基礎に、「良識と創意」の校是のもとに望ましい誇るべき学風の形成に努めています。