ビジネスライフ学科
生まれて初めて
先日、2人目の孫が生まれた。今度は男の子である。上の女の子は現在2歳でどうやら私のことを片言で「じいじ」と呼びだした。娘がそう呼ぶように仕込んだのかもしれない。別に「じいじ」という呼び名が気に入らないわけではないが、そのうち何かの弾みで「じじぃ」に変化しなければいいなと思っている。
なので、今度の男の子には「『おじいちゃん』だよ~」と私のことをまだよく認識もしていないうちから教えこんでいるのである。還暦も過ぎて自分のことを“ちゃん”付けで呼ぶように仕向けているのは滑稽であるが、「生まれて初めて」の体験は記憶にしっかりと刷り込まれるだろうし、万が一、言い間違えても「おじちゃん」とか「おにいちゃん」とか、むしろ若返り効果が期待できるのである。「じじぃ」と呼ばれる確率は極めて低く、これでリスク管理もばっちりである。
さて話題は変わり、25年ぶりに歯科検診を受けに行った話である。特にかかりつけの歯科医院はないので、ネット上で新しくて綺麗なところを発掘して、検診の予約をした。
予約当日となった。歯科医院に到着したらまずアンケートに回答、そして診察室に入ると「歯医者さんってこんなところだっけ?」と思うほど様々な機材があり、診察台もたくさんあって、案内されなければどこへ座っていいのかわからないくらいだ。25年前と変わらないのは、ときどき聴こえてくる「キーン」という高周波音とそれに反応してしまう妙な緊張感である。
検診結果はモニターに口腔内の画像が映し出されて丁寧に説明いただき、今後の治療計画が早速決定した。特に虫歯などはなかったのだが、1週間後に右下奥の親知らずの抜歯手術を行うことになり、緊張感どころではない異常な緊迫感に包まれながら家路についた。何しろ親知らずを抜くのは「生まれて初めて」のことだからである。
「すべての歯医者さんは2種類に分けられる。
すぐ親知らずを抜く歯医者と滅多に抜かない歯医者だ。」(注)
明日はいよいよ右下奥の親知らずの抜歯手術である。この1週間、家内からは「抜歯は命にも関わる大変な手術らしいよ」と脅された。家内の通っている歯科医院は、上記の後者のほうなので、親知らずは抜かずに済んでいるが、その代わりときどき親知らずの痛みに耐えなければならない。その点私の場合は抜歯のときだけ耐えれば、もう一生安泰なのである。いやでもちょっと待って。そもそもこの歯痛くないのになぜ抜かなければならないんだろう。まぁ、余計なことは考えずに手術に集中しよう。そのためにここ3日間「ゴッドファーザー」(3部作)のDVDを観て、気持ちを完全に作り上げてきたのである。何かあったら全身に銃弾を浴びているシーンを思い返せばよい。歯の1本や2本、どうってことない。
抜歯手術当日。ここからは歯医者さんと私のやりとりを実況中継でお伝えしよう。「○〇」は実際の声で、( )内は心の声を表している。
歯医者さん「麻酔の注射しますね。ちょっとチクっとしますよ。」
私 「・・・」(麻酔とはいえ、意外と痛いもんだな)
歯医者さん「麻酔が効いてきたら、抜きますね。」
私 「・・・」(生まれて初めての手術だ。落ち着こう)
歯医者さん「では、抜きますね。はい、取れましたー」
私 「・・・」(はやっ、全然痛くないじゃん。あの心の準備は何だったんだろ)
歯医者さん「では、止血しますので、軽く噛んでください。」
私 「・・・」(えー、もう終わりかい。拍子抜けしたな。DVDまで観てきたのに)
(あれ?おかしいぞ…口が閉じない…どうした?閉じようとしているのにあごに力が入らない…あれ?あれ?)
歯医者さん「あごが外れちゃってますね。」
私 「ハ・フ・ハ・フ」(な、何それー!ゴッドファーザー思い出せっ! 銃弾!銃弾!だめ効かない、パニック…どうするっ…あごって…外れるの??…)
歯医者さん「よくあご外れるんですか?」
私 「ウハ※▽ハ◆□▲〇ゲフ!」=(生まれて初めてです!)
これ以上は見苦しいので実況中継はここまで。
(by 長島)
(注)映画「スウィングガールズ」(監督:矢口史靖、主演:上野樹里、2004年公開)の後半のコンクール会場に応援に来ていた野球部員が言ったセリフ「すべての人間は2種類に分けられる。スウィングする者とスウィングしない者だ。」を参照した。
【お知らせ】9月21日(土)のオープンキャンパス(ビジネスライフ学科)の体験授業では経済学「超絶簡単!ゲーム理論の解説」を行います。参加される方はゲーム理論を「生まれて初めて」聞くことになるかと思いますので、記憶にしっかりと刷り込まれて、帰りには全員の方が私のことを「おじいちゃん」と呼んでくれると思います。私にとっても本学で体験授業を実施するのは「生まれて初めて」で、何かトラブルが起きてくれると、それもまたブログのネタになりますので、今からドキドキワクワクです。お待ちしています!!